日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-082
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里山指標生物としてのケシキスイ類の発生消長
*岡田 賢祐野村 雄太宮竹 貴久
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抄録

里山の主な構成樹であるコナラ・アベマキ・アラカシの樹液には、英名でsap beetleと呼ばれるケシキスイ類が多数存在する。里山に普通に生息するケシキスイ類を用いて里山環境の評価を試みるためにケシキスイ類の発生消長を調べた。アベマキ、コナラとアラカシが主に植生する二次林(岡山大学演習林:半田山)において、バナナをベイトトラップとして発生消長の経時調査を2002_から_2004年の3年間行った。トラップ数は、2002年に13個、2003年に14個、2004年に8個とした。調査の結果、2002年で16科41種725個体、2003年で10科21種534個体、そして2004年で10科34種471個体の甲虫が捕獲された。そのうち、2002年で12種614個体、2003年で5種458個体、そして2004年で12種422個体のケシキスイ科の甲虫が捕獲された。いずれの年もケシキスイ科の甲虫が捕獲数全体の85%以上を占めた。このうち最も多く捕獲されたヨツボシケシキスイ、モンチビヒラタケシキスイとキマダラケシキスイの3種はいずれも樹液を摂食する。そこで3年間を通してこの3種のアバンダンスについて詳しく解析した結果、3種の個体数ピークは明らかな違いを示し、資源利用の時期が異なる可能性が示唆された。またバナナトラップではほとんど捕獲されなかったナガコゲチャケシキスイやルイスコオニケシキスイは、野外の樹液では多数確認することができた。従ってバナナトラップは、樹液に集まるケシキスイ個体群の一部を反映しているものと考えられた。しかしバナナトラップは容易に作成できることから、このトラップを用いてケシキスイ類の発生を調査することで里山構成林の樹液資源量を推定比較できる可能性がある。

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© 2005 日本生態学会
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