日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-083
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消費者の栄養塩リサイクルとパッチ形成プロセスは湖沼の藻類多様性にどのような影響を与えるか?
*加藤 聡史占部 城太郎河田 雅圭
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抄録

食物網のプロセスを理解するうえで、近年、空間的な要因を考慮することの重要性が説かれている。水系でも動物プランクトンが空間的に集合する現象については、さまざまなパターンとプロセスが考えられている。にもかかわらず、従来の湖沼におけるプランクトン食物網の研究の多くで、湖沼の生物的・非生物的構成要因は空間的に均質であるという想定をしており、こうした動物プランクトンの空間的パターンやプロセスが、特に下位の栄養段階である藻類に対していったいどのような生態学的影響を与えるかという疑問についての研究は驚くほど少ない。動物プランクトンが藻類に対して与える影響には大きく分けて、『摂食』と『栄養塩の再供給』の二つがある。近年、後者の栄養塩リサイクルが藻類群集の成長と競争に与える効果について大きく着目されつつある。これまでの消費者による栄養塩リサイクル(CNR)を考慮したモデリング研究事例においては、CNRは多様性を下げる要因であると考えられている(Andersen 1997; Grover 2002)。しかし我々は、これまでの研究で、消費者による栄養塩リサイクルの時間的変動が藻類の一時的な多様性を高くする可能性を示した。我々は、動物プランクトンの集合プロセスの違いが消費者のリサイクル効果の空間的パターンを変えるのではないかと考えた。消費者の集合プロセスの違いによって、栄養塩を巡る藻類の局所的な競争関係が変化し、系の藻類の多様性パターンに違いをもたらす可能性がある。そこで、生態学的なプロセスの中で消費者のパッチが持つ役割の一例として、空間構造と栄養塩リサイクルの効果を考慮したモデルを考える。消費者のパッチ集合プロセスの違いが藻類の競争と多様性にどのように影響するかを比較する。

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© 2005 日本生態学会
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