日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S8-2
会議情報
同所的種分化? マダラテントウの場合
*片倉 晴雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

食植性昆虫は種数にして全生物の4分の1を占めると言われている。その種分化過程を解明することは、現在の地球上に見られる生物多様性の起源の相当部分を説明することに他ならない。食植性昆虫の種分化に関してはこれまでに様々な研究が行われ、新しい食草へ適応した種内品種(ホストレース)の形成を経由する同所的種分化が異所的種分化と同じように重要である、という考えが広く支持されている。しかし、同所的種分化によって生じたことが確実視される例はむしろ稀であり、それがどの程度頻繁に生じているかは不明である。食植性昆虫においては、チョウ類のように成虫の餌資源と幼虫の利用する食草が一致しないタイプと、ハムシ類のように、成虫と幼虫が同じ餌資源を共有するタイプがあり、同所的種分化の生じやすさにもそれが影響していると考えられる。ここでは、ハムシタイプの食草利用を行うマダラテントウ類に属し、食草の違いのみによって生殖的に隔離されていると考えられるヤマトアザミテントウ(食草はアザミ類)とルイヨウマダラテントウ(ルイヨウボタン)の生殖隔離の詳細についてのべ、この2種ときわめて近縁でアザミとルイヨウボタンの双方を食草とするエゾアザミテントウの食草利用パターンと対比させながら同所的種分化における食草変換の重要性について考察する。さらに、時間が許せば、ナス科植物依存の状態からマメ科のムラサキチョウマメモドキをカバーする方向に食草の拡大が進行中のインドネシア産のニジュウヤホシテントウと、同所的にホストレースが分化しつつあると見られるインドネシア産マダラテントウの1種(Henosepilachna sp. 3)(キク科のMikania micranthaとシソ科のLeucasなどを利用)について紹介する。

著者関連情報
© 2005 日本生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top