日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S8-3
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シクリッドにおいて同所的種分化は起こりうるのか?
*河田 雅圭
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抄録

アフリカ湖のカワスズメ科魚類において、性選択による交配前隔離が急速な種分化を引き起こしていることが指摘されてきた。特に、ニッチのほとんど違わない同所的に生息する近縁種が体色の違いで、種間の交雑が妨げられていることから、オスの体色に対するメスの選好性の進化によって同所的種分化が生じた可能性が指摘された。そこで、近年、性選択のみによって生じる同所的種分化モデルがいくつか提唱されてきた(Higashi et al. 1999; Kawata and Yoshimura 2000)。しかし、Aregard and Kondrashov (2004) は、オスの派手な色を好むことによって生じる分断的な性選択による同所的種分化は、非常に限られた条件のみでおこることを指摘した。 一方、カワスズメ科魚類を含め、いくつかの魚類では、色の知覚とメスの選好性の間に関係があり、色の知覚の適応分化が、種分化を引き起こすというsensory dirve仮説が注目を集めている。Terai et al. (2002)らは、カワスズメ科魚類において視物質を構成するオプシン遺伝が、種内で固定しているが種間では異なることを示した。これらのことから、視物質の進化によるメス選好性の進化によって種分化が生じる可能性について個体ベースモデルをもちいて検討した。 モデルは以下の仮定をおいた。個体は異なる吸収波長を持つ3つのオプシン遺伝子を持つ。2つのオプシン遺伝子の吸収波長とオプシン遺伝子の発現量が色の感受性を決定する。感受性の高い色の体色に対してよりメスは選好性を示す。オスの体色はpolygeneである。それぞれがビクトリア湖の観測のように、水中の光環境は、深度によって徐々に変化する。シミュレーションの結果、水中の色環境の勾配が中程度のときに種分化が生じることが示された。水中の色環境の均一な同一な場所で性選択のみによって同所的分化は生じにくいと考えられた。 同様に、緑の水環境において、めだつ色である赤と青をもつ2つの種が同時に種分化をするかどうかも検討したが、種分化は同所的には生じなかった。

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© 2005 日本生態学会
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