日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S9-2
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葉の光合成光順化と解剖学的性質との関係
*小口 理一
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抄録

 植物が受ける光環境は時間的、空間的に多様である。ギャップ形成などで突然の光環境の改善が起こると、多くの種では既に展開が終了した葉の光合成能力が上昇する。これは成長速度の上昇につながり、その後の光獲得競争に有利であると考えられる。しかし、この順化能力は種によって異なる。なぜ種によっては光順化を行わないのか?本研究では葉の解剖学的性質が成熟葉の光順化能力を制限すると考えた。葉緑体は細胞間隙からCO2を受け取るために葉肉細胞表面付近に存在する必要があるが、ほとんどの種において成熟葉は厚さの可塑性を失い、葉肉細胞表面の面積を増やすことができないからである。
 環境制御室において1種の草本と3種の木本について弱光から強光への成熟葉の生理的、解剖学的応答を調べた。また、自然環境での順化メカニズム、順化によるベネフィットを調べるため、冷温帯樹林にギャップを形成し、8種の木本実生の応答を観察した。
 その結果、光合成能力の増加が見られた全てのケースで葉緑体が細胞間隙に接する面積(Sc)が増加し、Scの増加が光合成能力の増大に不可欠であることが示唆された。Scを増加させるメカニズムは種間で異なり、陰葉の細胞表面付近に葉緑体が存在しない隙間があり、そこを埋めるように葉緑体が大きくなる種、展葉終了後でも葉の厚さを増やし、葉肉細胞表面積を増やす種が観察された。一方、陰葉の細胞表面にほとんど隙間が無く、葉の厚さを変えることもできずに光合成能力が変化しなかった種も観察された。ギャップ環境での光合成速度を計算したモデルは、光順化による光合成能力の上昇は炭素獲得量を増やすことを示したが、順化に必要なコストやリスクまたギャップ形成の確率といった不安定要素があるために、順化能力を持たない種が存在すると考えられた。

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© 2005 日本生態学会
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