日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S10-2
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輸入昆虫における随伴侵入種問題~セイヨウオオマルハナバチと外国産クワガタムシを例として~
*五箇 公一
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抄録

我が国では昨今、特に産業用資材として、またペットとして大量の外国産生物が輸入されており、その中でも昆虫種の占める割合は極めて高い。生きた生き物を持ち込むということは、その生物が生息していた地域や空間の生態系の一部をそのまま「切り出して」持ち込むことを意味し、その生物体内には無数の微生物や微小動物のミクロ生態系が存在する。当然輸入昆虫にも無数の未知なる寄生生物が随伴して侵入してきていると考えられるが、現時点で我が国には、輸入昆虫の検疫システムは家畜扱いのセイヨウミツバチおよびカイコを除いて皆無である。 宿主と寄生生物の間に存在する独特の生物間相互作用関係は、宿主と寄生生物の間の長きに渡る共進化の結果として存在しており、生物移送に伴う外来寄生生物の侵入は、この共進化プロセスを崩壊させ、免疫や抵抗力をもたない在来生物種に対して深刻な打撃を与える結果となる。逆に寄生生物も本来は自然宿主のもとで共生関係を築き、平和に生息していた生物多様性の構成員と言っていい。それを「侵略的」な種に変貌させるのは人間自身に他ならず、その意味で寄生生物の固有性・多様性も十分に調査する必要があり、保全対象ともすべきと言えるのではないだろうか。 本講演では、輸入昆虫の中でも特に大きな注目を集める農業用生物資材セイヨウオオマルハナバチおよびペット用外国産クワガタムシに随伴して侵入してくる病原微生物や寄生性ダニについて、被害事例などこれまでの知見に加えて、当研究室で進めている分子遺伝マーカーおよび形態に基づく宿主-寄生生物間の共種分化プロセス解明に関する研究成果を中心に話題提供を行い、昆虫輸入における侵入寄生生物の管理のあり方について議論したい。

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© 2005 日本生態学会
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