日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S10-4
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日本の動物園における外来寄生虫の現状と取り組み
*宮下 実
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抄録

 日本には現在90の動物園があり、そこで飼育されている哺乳類だけを取り上げても約400種、その飼育数は3万頭を超える。それらは日本産野生動物と家畜を除けば、約90%は外国原産の野生動物である。半世紀前には野生由来の動物が海外から直接輸入されることが一般的であったが、CITESによる取引規制が進み、希少野生動物のほとんどは動物園などの飼育下で繁殖したものに限られるようになった。 野生個体も飼育下繁殖個体も海外から輸入されれば、それに伴って日本には本来存在しない寄生虫がもたらされるのは当然のことである。日本での輸入動物に対する動物検疫はウシ、ブタ、ウマなどの家畜では以前から非常に厳しい体制が敷かれていたが、それ以外の野生動物は検疫対象にもなっていない。2000年1月にやっとアライグマ、スカンク、キツネ、サル類が検疫対象となったが、それら以外はまったくフリーパスで現在も輸入されている。すなわち動物の保有する病原微生物や寄生虫が何の検査もされずに国内に侵入しているのが現状で、各動物園では受入れ時に検疫を実施し、飼育動物への感染予防のために、寄生虫を保有する場合には駆虫を実施している。 外来寄生虫としては、北米原産のアライグマには固有の寄生虫であるアライグマ回虫が知られているが、日本の動物園で飼育されるアライグマにも本回虫は高率に寄生していた。またアラスカから千島列島を経て入り込んだといわれる条虫の一種、エキノコックスは終宿主であるアカギツネが持ち込んだものであり、いまや北海道全土にその汚染が広がり、道内の動物園で飼育されていたサル類からもその感染が報告されている。それら以外にも、日本には存在しなかった多くの寄生虫が動物園で確認されている。 

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