日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S13-2
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ヒルムシロ属における異形葉形成と環境ストレス応答
*飯田 聡子
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抄録

 多くの水生植物は水中では沈水葉をつけ,乾燥・高温・光ストレスやアブシジン酸(ABA)存在下では浮葉や気中葉を形成する.一般に,沈水葉は線形または細裂して質が薄く,気孔やクチクラ層,海綿状組織が分化していない.一方,浮葉や気中葉は幅広く全縁で肥厚し,気孔やクチクラ層,柵状組織と海綿状組織が分化している.このように水生植物は環境ストレスに対応した形態形成を研究するうえで優れた材料である.
 単子葉類の水生植物,ヒルムシロ属は世界に約100種,日本では約20種が分布し,種間雑種も数多い.この群の植物は生態的特性(生育域と生育型可塑性)より4タイプに分けられる.
沈水型(淡水,生育型可塑性がなく,沈水シュートに沈水葉のみを形成)
浮葉型(淡水,生育型可塑性を持ち,沈水シュートに沈水葉に加えて浮葉を形成)
陸生型(淡水,生育型可塑性を持ち,沈水葉・浮葉をつける沈水シュートと渇水時に陸生シュートを伸長させ,気中葉を形成)
汽水型(淡水_-_汽水,生育型可塑性がなく,沈水シュートに沈水葉のみを形成)
生態的特性には多数の形態形成やストレス応答の遺伝子群が関与する可能性が高く,これら4タイプが独立・並行して分化したとは考え難い.しかし日本産ヒルムシロ属の葉緑体分子系統樹では4タイプは単系統群を形成せず,沈水葉の形態と倍数性に基づく3つの群が認められた.そこで近縁な陸生型種と汽水型種に注目し,それらの種間雑種を含め,栽培比較実験やストレス耐性実験を行った.その結果,陸生型形成には母系遺伝の葉緑体(細胞質)ゲノムの種類,高温や塩ストレス耐性の有無が関与することが示唆された.また,核ゲノム支配の葉緑体局在の熱ショックタンパク質遺伝子は,重複しアミノ酸レベルで多様化していることが明らかになりつつある.

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© 2005 日本生態学会
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