日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S13-3
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アブラナ科野生植物におけるエコデボ研究の試み
*工藤 洋
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抄録

 シロイヌナズナに近縁の野生種は多様な生活史を示し、分子発生遺伝学を利用した進化研究の対象となる。対象となる形質には2つのタイプがある。 1つめのタイプの形質は、単一遺伝子座のアリール変異で表現型がきまる形質である。変異は単純なメンデル遺伝をし、表現型可塑性は小さい。このタイプの形質では遺伝子座にかかる自然選択を直接研究できる。分子集団遺伝学的解析、対立遺伝子の分布と環境勾配との共分散、近自殖系統やトランスジェニック植物の移植などによって自然選択を研究できる。 2つめのタイプの形質は、複数の遺伝子座がエピスタティックに表現型を決めている形質である。環境依存的な発現調節が関与していることが多い。変異は量的に遺伝し、表現型可塑性がある。このタイプの形質の研究は、栽培実験によるリアクションノームの変異の検出で始まる。次に分子発生学的な仕組みに準拠した「変異の代表値」を用いて遺伝子型_---_環境共分散を検出し、最終的には変異の原因遺伝子の探索にいたる。 この講演では、現在私たちが行っているアブラナ科野生植物の研究について紹介する。1つめのタイプの形質として、ハクサンハタザオ(シロイヌナズナ属)における表面の毛の有無の多型を研究している。1遺伝子座に支配される自然集団内の多型を対象に、植食昆虫に対する防御を介した平衡選択の検出を試みている。2つめのタイプの形質として研究しているのが、開花反応である。シロイヌナズナでは、開花調節経路がFLCという転写因子の発現調節に収束していることがわかっている。そこで、栽培実験によって開花反応性の適応的分化が起こっていることを明らかにしたタチスズシロソウ(シロイヌナズナ属)とタネツケバナ(タネツケバナ属)を用いてFLCのmRNA転写量を指標とした研究を進めている。

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© 2005 日本生態学会
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