日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S14-3
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食物網モデルの妥当性の検証について
*吉田 勝彦
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抄録

 現実世界の食物網の研究者と食物網モデルを用いて理論的な研究を行う研究者が協力すれば、食物網に関する研究が効率的に進められると期待される。そのためにはお互いの信頼関係を構築することが必要不可欠である。理論的な研究を行う研究者が現実世界の食物網の研究者からの信頼を得るためには、構築したモデルが信頼性の高いものであることを示さなければならない。そのための方法として一般的なものは、モデルが実際の食物網の特徴を再現していることを示すことである。そこで、実際の食物網の記載に使用される結合度(相互作用の緊密さ)、食物連鎖長(最大値、平均値、標準偏差)、最上位捕食者、基底種、中間種の割合、1種当たりの捕食者種と餌種の数などのパラメータを利用してモデルと実際の食物網を比較することがよく行われる。しかし、いくつかのパラメータは食物網のサイズや調査努力量によって変動することが知られている。また、現実の食物網のデータでは、複数の種を栄養種としてひとまとめにしたり、詳細な分類をせずに高次分類群のまま扱ったりすることがよく見られるが、このことによって値が変わるパラメータもある。これらは、モデルと実際の食物網を比較する際に大きな障害となる。このような問題を解決するために、新たなパラメータを定義することも試みられており、今後もそのような試みが続けられると思われるが、その際にはパラメータが直感的にわかやすいものになるように留意しなければ、モデルと現実をつなぐ架け橋にはなりにくい。また、いくら変数を操作しても、精度の高いデータが無ければモデルの検証は不可能である。近年、精度の高いデータが公表されつつあるが、更に多くの食物網において同様の研究が行われることが望まれる。

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© 2005 日本生態学会
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