日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S16-6
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沿川住民による再生された礫河原の評価と住民参加
*皆川 朋子天野 邦彦
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抄録

 自然再生事業の評価を自然科学の観点からのみでなく,住民の視点から明らかにすることは,事業評価を行う上で必要な事項であり,今後,自然再生を展開していく際の有益な情報になるものと考えられる.
 事業実施前の1999年に,樹林化が進行している永田地区の自然環境に対する住民の評価を明らかにするため,沿川住民2000世帯(ランダム抽出)を対象に,アンケート調査を行った.その結果,左岸・右岸住民で評価は異なり,高水敷の樹林化が進行している右岸住民は左岸住民よりも評価が低く,多摩川らしくないと評価していること,生じている環境の変化や生物への影響に関する情報を提供することにより,異なっていた評価は一致する方向へと変化すること,評価や情報の影響は,年齢や経験の違い等によって差異があることを明らかにし,合意形成を図る上で,情報の提供や共有化が重要な役割を果たすことを示唆した.
 その後,礫河原再生事業が実施されたが,住民は事業をどう評価しているのであろうか.また,実施前にみられた評価の違いは,事業評価にも影響しているのであろうか.これらを明らかにするとともに,本事業における情報提供や住民参加に関する課題を抽出するため,2004年に再度沿川住民2000世帯(ランダム抽出)を対象にアンケート調査を行った.その結果,回答者の60%が望ましいと評価し,事業内容に関する説明文の提示後は賛成できるが78%となる等,事業は概ね沿川住民に受け入れられるものであったと判断された.また,年齢が高く,興味・関心が高く,事業内容や目的を認知していた人ほど,評価は高い傾向があった.しかし,事前に事業内容や目的を認知していた人は10%に留まり,情報提供の重要性が示されていたにも係わらず,情報の提供が不十分であったこと,住民の計画への参加の意思と比べ,計画への自由な参加,発言の機会が限られていたこと等が課題として抽出された.

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© 2005 日本生態学会
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