日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P3-117
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魚類における右利き・左利きの個体群動態に捕食が与える影響
*中嶋 美冬松田 裕之堀 道雄
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抄録

 魚類の左右性とは、体の前後軸を中心線とする右体側と左体側とで、一方が他方より構造的・機能的に優位にある種内二型を指す(「生態学事典」より)。特に下顎の非対称性が顕著であり、顎が右に開き体が左に曲がる個体を「左利き」、その逆の個体を「右利き」と呼ぶ。この種内二型は遺伝形質であり、1遺伝子座2対立遺伝子に支配される左利き優性のメンデル遺伝と考えられている。この魚の左右性は、形質値のヒストグラムが双山分布をする分断性非対称(Antisymmetry)の一例と考えられる。各種内の利き比率は数年周期で振動している。魚食魚では自分と反対の利きの餌個体を主に捕食することが明らかにされており、本研究ではこれを交差捕食(Cross Predation)と呼ぶ。反対に、同じ利き間での捕食を並行捕食(Parallel predation)と呼ぶ。このような捕食の非対称性が魚類の左利きと右利きの共存を維持する要因と考えられる。その理由は以下のような頻度依存淘汰により説明できる。餌種に左利きが多かったとき、それを捕食する種では右利きが有利となり多数派になるため、やがて餌種では左利きが減少して右利きが増え、捕食者ではかつて少数派であった左利きが有利となって後に多数派となるように、被食者と捕食者において多数派の利きの入れ替わりが繰り返されると予想される。本研究では、交差捕食が起こる仕組みを捕食行動から考察し、また数理モデルを用いて上記の仮説を検証した。

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© 2005 日本生態学会
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