日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P3-133
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AFLP法を用いた帰化植物キレハイヌガラシのクローン構造の解析
*大久保 研蔵江藤 典子小野 清美原 登志彦
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抄録

キレハイヌガラシRorippa sylvestrisはアブラナ科の帰化植物で強害雑草として知られ、北海道を中心として畑地や荒地など様々な場所で生育する。本種は強い栄養繁殖能力を持ち、根や茎、葉柄の小さな断片から萌芽して栄養繁殖体を形成することができる。また、クローン植物であり地下茎によるクローン生長を通じて空間的に広がることができる。これらの特性により好適な環境下では本種は小さな断片から短期間であたりを覆いつくすほどの規模にまで生長する。帰化植物は外部からの侵入植物であるために、1つの種子や植物体断片から広がるというようにして栄養繁殖のみを行う系統が定着することもあり、本種でも種子繁殖をせずにほとんど単一の遺伝子型のまま、広く定着している可能性もある。しかし一方で、本種は種子をつける系統とつけない系統があることが知られており、種子をつける系統が種子繁殖をすることによって遺伝的多様性を維持していると考えられる。 そこで本研究では強い栄養繁殖能力を持つキレハイヌガラシにとって「手間のかかる」繁殖様式である種子繁殖がどの程度定着に寄与しているのかを明らかにするために、AFLP法を用いてクローン構造の解析を行った。サンプリングは札幌市内の生育地に設置した5m x 35mのプロットから44個体を採取し、また、他集団との比較を行うために札幌市外の2ヶ所の生育地から3個体ずつ採取した。 AFLP解析の結果からはいくつかのクローン集団が確認され、単系統から栄養繁殖のみによって定着しているという可能性は否定された。つまり本種は種子繁殖に多少なりとも依存しているか、栄養繁殖する系統がいくつか存在するものと考えられる。今回の発表ではさらに集団内の遺伝的変異性とプロット内でのクローンの分布の様式について報告する。

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© 2005 日本生態学会
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