日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P3-173
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天売島ノネコ対策における合意形成のための住民意識調査
*池田 透立澤 史郎
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抄録

日本の外来種対策においては一般市民や地域住民との合意形成が充分とはいえず、駆除に向けては多くの問題が残されている。特に哺乳類では、駆除対策に関して動物愛護の立場からの感情的反発も根強く、こうした社会的状況を考慮せずして外来哺乳類対策の円滑な実施は不可能である。そこで本研究では、飼養動物由来の外来哺乳類であって人間との関係が密であり、かつ地域生態系への悪影響が危惧されている北海道天売島のノネコ問題を対象として、地域住民や一般道民の合意形成や、管理対策を円滑に進めるための体制づくりに必要な条件の検討を試みた。全島民を対象としたノネコ対策に関する地域住民意識アンケート調査の結果、ノネコ問題自体に関しては島民の関心は非常に高く、多くの島民にノネコの存在が問題視され、ノネコの除去にも賛成する割合も高いことが明らかとなった。島民の中にもノネコの存在が問題であり、解決すべき問題であるという意識は強い。ただし、多くの島民にとってのノネコ問題の焦点は畑や庭を荒らすとか魚を盗むといった生活被害への苦情が多く、海鳥の減少可能性などの生態系保全に関わる問題意識は低かった。この点からも、従来のノネコ対策の目的と実際に島民が望むノネコ対策の目的に大きな隔たりがあることが明らかとなった。また、ネコ飼育者と非飼育者ではノネコ問題に対する意識に大きな差がみられ、ネコ飼育者においては自分が飼育しているネコ以外にも愛情を注いでいることが推測され、このことがノネコの管理をいっそう困難にしていることが予想された。今後のノネコ対策の在り方として、ノネコの実態把握を進めるとともに、島民同士が積極的にノネコ問題に意見を述べられる状況を作り上げ、島民参加のノネコ対策を作り上げていくことが重要であると考えられた。 

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© 2005 日本生態学会
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