日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: A102
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非致死的な捕食が被食者の質に与える影響 2 -自切したイナゴの質の変化
*本間 淳鶴井 香織岡田 陽介西田 隆義
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抄録

自切は、捕食者に襲われた際に体の一部を犠牲にして捕食を回避する行動であり、いくつかの分類群においてみられる。バッタ類の自切には、後脚の切断という一見大きなコストがともなう。したがって、自切は捕食者による被食者への非致死的捕食の例ととらえることができる。本発表では、後脚切断という非致死的ダメージの適応度への影響評価を試みる。これにより、植食者の防衛戦略の進化や個体群動態に及ぼす捕食者のトータルの影響を評価することが可能となる。自切にともなう適応度コストの研究は、主にトカゲを使って試みられているが、生涯にわたる影響を評価するのが困難なため、あまり進んでいない。本研究では、コバネイナゴOxya yezoensisを用いて、後脚を自切することの適応度コストを評価することを試みた。本種は、一年生であり、自切をするのはほぼ成虫時に限られるため、生涯繁殖成功の評価が比較的容易であり、成長に及ぼすコストも無視できるという利点がある。まず、自切の起こしやすさについて、片足と両足、メスとオスで違いがあるか、実験を行った。すると、片足よりも両足を自切するときの方が、また、メスよりもオスの方が有意に自切しにくかった。この結果は、自切の繰り返しにともない適応度コストが増大すること、またそれはオスにおいてより大きいことを示唆する。そこで、自切にともなう生存コストと繁殖コストについて、雌雄別にそれぞれ検討した。生存コストについては、生理寿命と跳躍パフォーマンスの変化に、繁殖コストについては、体重変化と交尾成功に注目した。生理寿命には有意な変化はなかったが、跳躍パフォーマンスは自切個体で有意に減少した。また、定位行動の有意な変化が自切個体で検出された。体重については、有意差は検出されなかった。交尾成功については、オスのみ自切個体で有意に減少した。これらの結果に基づき、コバネイナゴにおける自切の適応度への影響を議論する。

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© 2005 日本生態学会
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