日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: A104
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淀川における魚類相の現状
*内藤 馨平松 和也
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抄録

 淀川における魚類相の現状を調査し、生息環境との関わりについて検討した。魚類採集調査は2004年7月7日から9月6日にかけて三川合流点から淀川大堰の間の本流域およびワンド域145ヵ所において地曳網を用いて実施した。確認魚種は36種で、本流域は29種が確認され、その組成はオイカワ、コウライモロコ、オオクチバス、ブル_-_ギルの順で多く、ワンド域は29種が観察され、多い方からブル_-_ギル、フナ類、モツゴ、オオクチバスの順となった。特にワンド域ではイタセンパラ、バラタナゴ、ツチフキ等の割合が激減し、ブル_-_ギル、オオクチバス、カマツカ等の占める割合が増加し、種類数の減少もみられた。しかし、城北ワンド群の一部や新たに造成された樟葉人工ワンドでは多様性を維持している。種の多様性が失われつつあるが、オオクチバス、ブル_-_ギル等外来魚による在来魚種の捕食が少なからず影響していると考えられ、主に止水域を好む外来魚が増加したのは長期にわたる本流の湛水化が一因であると思われる。その他、ヨシ帯は在来魚種の産卵や隠れ場所として重要であるが、本流域やワンド域で見られない所も多く、そういった場所が減少していることが窺える。また、水位、水量の変化が少なく、ヨシ帯や高水敷等が産卵場所としての利用機能が低下していることが懸念される。さらに、オオカナダモ、ボタンウキクサ、ナガエツルノゲイトウ等の外来植物は群落を形成し、水面、水底を覆い、酸素欠乏や光不足を生み出し、水生生物に悪影響を与えていると考えられ、冬季には枯れて水底に沈む。それらは腐泥として堆積し、底質の悪化と水域の富栄養化を促し、イタセンパラ等タナゴ類が産卵する二枚貝類の生息に影響を及ぼしていると考えられる。外来生物の低減化、水位の変動等が在来魚種の生息環境の保全に重要であろう。

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© 2005 日本生態学会
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