日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: B105
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コピー産卵と配偶者選択
*椿 宜高山肩 重夫
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抄録

均翅亜目のトンボは、複数のメスがひとつの産卵基質に集まって産卵することがある。これは、産卵のために飛来したメスが、他のメスが産卵している産卵基質に誘引されるからである。これをコピー産卵と呼ぶことにする。コピー産卵には、連結産卵のペアが産卵場所をコピーする場合(グンバイトンボ科など)と、メスだけが産卵場所をコピーする場合(カワトンボ科など)がある。ここでは、ヒガシカワトンボのコピー産卵について検討する。両科に共通するコピー産卵の利点は、好適な産卵場所(卵の生存率が高い、捕食者がいないなど)の情報を得られることであろう。しかし、カワトンボ科のコピー産卵は、縄ばりオスの存在にも影響されるようで、性淘汰によって進化した可能性がある。野外観察の結果、次のことがわかった。(1)すでに産卵メスがいる縄ばりに新しいメスが着地すると、縄ばりオスと交尾せずに産卵する(警護は受けられる)確率が高かった(SAG: Stealing a Guard)。(2)縄ばりオス(オレンジ翅型)の翅色を尺度にRHP(Resource Holding Potential)を評価したところ、RHPの高いオスはあまりSAGを許さないが、RHPの低いオスは多くのメスに警護を盗まれる傾向があった。(3)RHPの高い縄ばりオスは、スニーカーオス(透明翅型)の干渉からよくメスを警護し、RHPの低いオスはしばしばメスを奪われた。これらの結果から、メスはコピー産卵をすることによって、結果的にRHPの高いオスを交尾相手として選択していることが示唆された。

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© 2005 日本生態学会
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