2014 年 50 巻 1 号 p. 65
世界人口の約16%(およそ10億人)がうつ病関連疾患に悩まされている今日,病態メカニズムの解明および治療法の開発は喫緊の課題である.うつ病に関する研究は古くから行われてきたが,その焦点はほとんど神経細胞に当てられていた.1998年,うつ病患者の前頭前皮質においてグリア細胞数が減少していることが報告されたことを皮切りに,うつ病におけるグリア細胞の重要性が次々に報告されている.しかし,うつ病とグリア細胞機能の関連性はいまだ十分に理解されていない.本稿では,グリア細胞の1つであるアストロサイトが放出するATPが,うつ病の病態メカニズムにおいて重要な役割を担うことを明らかとした論文を紹介する.