ファルマシア
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数式なしの統計のお話
第5回 医薬品開発と統計
それはA. B. ヒル,J. コーンフィールドから始まった
酒井 弘憲
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2014 年 50 巻 10 号 p. 1002-1003

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抄録

少し暑さも納まり,過ごしやすい季節になってきた.サマージャンボに続き,オータムジャンボ宝くじが発売される.当たらないとは分かっていても先日のサマージャンボのように1等前後賞合わせて6億円などと言われると,ついつい買ってしまうのが人情である.銀座数寄屋橋の宝くじ売り場などは毎回,長蛇の列である.しかし宝くじは,言ってみれば某銀行や地方自治体が胴元の公認/公営ギャンブルみたいなものである.
皆さんはそのテラ銭,つまり胴元の取り分の割合をご存じだろうか? 競馬などの公営ギャンブルで25%くらい,パチンコでもせいぜい12%程度なのである.ところが,宝くじのテラ銭は何と54%にも上るのである.売り上げの半分以上が懐に入る仕組みで,胴元の某銀行は笑いが止まらないであろうと思われるかも知れないが,このお金はご存じのように公益事業に使われるので,公共団体などへの寄付のようなものとも考えられなくもない.4月に消費税が8%に上がって不平不満たらたらのはずだが,宝くじなら炎天下に2,3時間並んでも買おうというのであるから,著者も含め,まったくみんなおめでたくできている.
統計の連載なので少しそれらしい話に戻ると,皆さんは,宝くじの当選確率はいったいどのくらいになると思われるだろうか? 確率の世界では,「期待値」という考え方がある.取らぬ狸の何とやらで,宝くじ1枚あたりでいくら自分の手元に戻ってくるかという金額である.ジャンボ宝くじの場合,1ユニットあたり1,000万本が発行され,その中で1等はわずかに1本のみ.つまり1等を手にする確率は,1,000万分の1の確率なのである.当選金の期待値は,当選金額×当選確率で計算されるので,1等3億円の期待値はわずかに30円ということになる.この計算を1等から6等まですべてに当てはめて合算すると,ジャンボ宝くじ1枚の期待値は140~150円程度なのである.1枚300円なのでその半分以下しか期待できないというのが現実なのである.
その事実を知ったうえでも,なお,宝くじをお買いになるかどうかは皆さんの判断次第であるが,あまりにも分の悪い勝負というよりほかはない(と偉そうに講釈しながらも著者自身,まずは買わなければ当たらないと,毎回購入しているのだが…).
勝負というと,医薬品の開発も勝負には違いない.1つの医薬品を開発するのに,いまや1,000億円以上の経費を費やし10年もの歳月を重ねることになるが,最後の最後で安全性で問題が見つかり開発中止になるなどといった事例は枚挙に暇がない.製薬企業にとっては,まさに真剣勝負なのである.

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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