ファルマシア
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バソプレシン受容体をブロックして時差ボケを防ぐ
楠瀬 直喜
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2014 年 50 巻 10 号 p. 1030

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抄録

体内時計は,バクテリアからヒトにいたるまで様々な生物に備わっている生理機能の1つであり,生体の恒常性の維持に寄与している.時差ボケ(正確には非同期症候群または時差症候群と呼ばれる)は,体内時計と外部環境のリズム(特に明暗周期)のズレが原因となって生じ,睡眠障害や頭痛,めまい,食欲不振といった症状が現れる.海外渡航時における時差ボケは一時的な問題であるが,交代制勤務者らは日々これらの症状に悩まされており,慢性的な時差ボケ状態にあると指摘されている.慢性的な時差ボケは集中力の低下に伴うヒューマンエラーを引き起こすだけでなく,近年ではうつ病やがんの発症リスクを高めることが明らかになってきている.そのため,時差ボケに対する治療薬は,疾患の予防という観点からも早急な開発が望まれている.今回,Yamaguchi らによって,アルギニンバソプレッシン(AVP)受容体が時差ボケ治療の標的分子となる可能性が報告されたので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Srinivasan V. et al., Adv. Ther., 27, 796-813 (2010).
2) Yamaguchi Y. et al., Science, 342, 85-90 (2013).
3) Ueda H. R. et al., Nat. Genet., 37, 187-192 (2005).

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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