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日本薬学会第134年会(熊本)を開催して
大塚 雅巳
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2014 年 50 巻 10 号 p. 943

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抄録

日本薬学会第134年会は2014年3月27日(木)から30日(日)にかけて熊本にて開催された.熊本での開催は,第101年会以来33年ぶりのことで,約8,000名の方々が参加し,4,000件以上の学術発表が行われた.第132年会(札幌),第134年会(横浜)が1つの巨大な会場施設内で行われたのに対して,プログラム全体を収容できる大きな施設を持たない熊本では,市街地の全体を年会の会場と考え,市中央部のホテルやホール(特別講演等),熊本大学黒髪キャンパス(口頭発表等),水前寺体育館(ポスター発表等)の3地区の会場を循環バスで連絡して運営した.離れた3地区で異なったタイプのプログラムを同時進行させるという計画は,後で振り返ってみると冒険であったが,何とか実行できたのは参加者各位のご理解ご協力は勿論のこと,熊本大学,崇城大学からなる組織委員,学生スタッフの全員のチームワークの賜物であった.第134年会では一般シンポジウムの申込みをすべて採択し,また一般演題では口頭発表の申込演題はすべて口頭で,ポスターの申込演題はすべてポスターでと,すべて申込時の希望どおりの発表形態で発表していただいた.
第134年会は「薬を創り,薬を育み,命を衛る」をテーマとした.平成18年度にスタートした薬学教育6年制が一巡し6年制の卒業生が世に送り出された.こうした中で,今後は薬剤師教育だけでなく,薬学研究者の養成にもますます力を入れ,両者をバランスよく進めることが薬学の健全な将来の発展に繋がる,という組織委員会の考えを本テーマは表している.
「創薬と育薬のバランスよい発展を」という考え方は,本年会の随所に見られた.なかでも会頭講演において,日本薬学会の新しい取組みとして,長井記念薬学研究奨励支援の創設が発表されたことが注目される.これは,学位を持った多様な薬剤師や薬学研究者を輩出するために設けられた大学院奨学金制度で,詳細は日本薬学会のホームページで見ることができる.また,佐藤記念国内賞の授賞対象がこれまでの「薬学一般」から「医療現場で薬学的活躍をした人」になったことも,今後の薬学の進む方向を示唆している.
さらに,薬学の将来を見据えた意義の深いシンポジウムや企画が多数行われた.独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が企画したシンポジウム「革新的医薬品の創出・実用化に向けて」は,医学,薬学,製薬団体,行政の重鎮がシンポジストとして結集したこともあって注目を集めた.フロアとの意見交換も活発に行われ,午後の全部の時間を割り当てた予定時間を30分もオーバーするほどであった.また,水前寺体育館会場ではPMDAによる薬事戦略相談の個別相談が行われたが,これは日本薬学会年会では初めての試みであった.
第133年会(横浜)に年会のプログラムをスマートフォンやタブレットから閲覧できるアプリが提供され好評だったが,第134年会でもこれを踏襲した.年会ホームページ,演題・参加申込システムなど,年会運営にいかにITを効果的に活用していくかが今後の課題になってくると思われる.第135年会(神戸)も順調に準備が進んでいると伺っているが,盛会をお祈り申しあげる.

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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