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セミナー
小児薬物療法の問題点と適正化
河田 興
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2014 年 50 巻 2 号 p. 121-126

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抄録

2012年度から小児薬物療法認定薬剤師の研修制度が開始され,小児薬物療法にかかわる薬剤師の専門性を認定する制度が始まった.この新しい認定薬剤師制度が小児薬物療法へ与える影響や期待は大きい.はじめから小児向けに開発された薬剤は少なく,成人への薬物投与に比べ小児への薬物投与には一定のリスクは避けられず,小児薬物療法認定薬剤師はそのリスクを小さくする役割が期待されている.小児に使用する薬の約7割は添付文書に小児への投与量の記載がなく,情報入手が困難な場合が多い.適切な情報を盛り込んだ添付文書などを通じて,世の中にある情報を広く知らせることが大きな課題である.
こどもは「風邪をひいた」「熱がでた」「咳がひどい」「食事が減った」などの理由で医療機関を比較的安易に受診する.多くの場合,こどもだけの意思で医療機関を受診することはない.そこには家族(主に母親)の暮らしぶり,考え方,交通手段,といった医療へアクセスする条件が重要である.もちろん,こどもの疾病・疾患の重症度によって受診する医療機関の取捨選択も行われている.
そのようなこどもたちを小児科医として診療するとき,医療機関を受診する背景にある親の「何とかして欲しい」という期待と共に「クスリをください」というニーズを否定することはできない.我々小児科医は無意識にでも,本当にきちんと加療することの必要な児・疾患と,とりあえず経過を見る(クスリを提供することもあるが)ことの区別をしている.
このような小児科診療における小児薬物療法には,次のような医学的,社会的な4つの問題点が内在している.
問題点1:こどもの病気の9割以上は軽症で,その多くが自然治癒する(クスリがいらない)
問題点2:こどもの病気は急変,重症化することが稀ではない(クスリはなかなか効かない)
問題点3:こどもが適切に医療機関へアクセスできないことがある(クスリが届かない)
問題点4:軽症例の容易なアクセスによって,限りある医療資源が浪費される(クスリの無駄遣い)
これらの問題点はこどもの医療に限ったことではないが,現状の小児医療現場では比較的大きな問題として捉えられている.本稿では「インフルエンザとオセルタミビル」と「新生児の薬物療法」を例にとり,この4つの問題点に焦点をあてて考えてみる.また,最近の小児薬物療法の問題点について,厚生労働省の研究班の報告から紹介する.

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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