2014 年 50 巻 3 号 p. 201-206
ドライアイとは「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり,眼不快感や視機能異常を伴う」と定義されている多因子性疾患である.日本での罹患人口は少なくとも約800万人,通院しないで市販点眼薬を使用している潜在患者も含めれば約2,200万人いると見込まれ,著しくQOLを低下させる疾患である.図1に示す通り,その背景は複雑であり,内科的疾患から起きるものや,目の手術に伴うもの,服用している薬の副作用でも起きる.シェーグレン症候群などの自己免疫疾患や,スティーブンス・ジョンソン症候群などの病気により涙腺が破壊されて,引き起こされる重篤なドライアイもある.
一般的なドライアイは,環境要因が大きいと考えられており,パソコンやスマートフォンなどの凝視や,冷暖房などの空調,コンタクトレンズの長期・長時間装用などがリスクファクターとして有名であり,さらには夜型の生活,食生活の変化,運動不足など,ライフスタイルの関与や加齢による影響も指摘されている.近年,これらのライフスタイルの変化や高齢化社会により更に罹患率が上昇しており,社会的な問題となっている.