ファルマシア
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セミナー
キラルアミノ酸のメタボロミクス
浜瀬 健司
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2014 年 50 巻 4 号 p. 315-320

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抄録

アミノ酸は生命体を構成する主要な化合物群の1つであり,地球上の生命は様々な形でアミノ酸を利用している.特にタンパク質の構成要素となる20種のアミノ酸は生体内含量が高く,遊離体として,またペプチドやタンパク質として多彩な機能を担っている.化学構造に着目すると,これら20種のタンパク質構成アミノ酸はすべて同一炭素にアミノ基とカルボキシル基が結合したα-アミノ酸であり,グリシンを除いてD型とL型の鏡像異性体が存在する(図1).一方で,生体内におけるアミノ酸鏡像異性体の含量比は大きくL型に偏っており,特にほ乳類のような高等動物では,L-アミノ酸のみが存在して生理機能を有すると長い間考えられてきた.
しかし近年,分析法の進歩に伴ってほ乳類の体内にもD-アミノ酸が存在することが明らかになり,生理機能を有していることが明確に示されてきた.様々な疾病とD-アミノ酸含量との関連も明らかにされ,アミノ酸の鏡像異性体を区別して定量する「キラルアミノ酸メタボロミクス」に関心が集まっている.本稿では現在までに明らかになってきたD-アミノ酸の生理的役割や由来,含量制御について解説するとともに,キラルアミノ酸定量を可能とする分析法について紹介する.併せて,キラルアミノ酸分析の医療応用についても紹介する.

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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