ファルマシア
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数式なしの統計のお話
第2回 統計のルーツを探る
酒井 弘憲
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2014 年 50 巻 4 号 p. 334-335

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抄録

早いもので,もう桜の季節である.巷では初々しい新人社会人を見かけ,おじさん社会人としては何となくエールを送りたい気分になってくる.筆者は,スポーツ,中でも野球なんていう集団遊びは興味もないし大嫌いなのであるが,どうやら日本では世の中の大半の人が野球を好きなようである.
よく,「2年目のジンクス」ということが言われるが,これも統計を生業にしている者の目から見れば至極当然な話なのである.「平均への回帰」という言葉を聞かれたことはないだろうか? その最初の事例は,フランシス・ゴールトン(彼はかのチャールズ・ダーウィンの従弟である)により1877年に発表された種子の重量に関する結果であった.「2年目のジンクス」も,この平均への回帰の1つの事例である.
本誌の読者の方々には,血圧の事例の方が分かりやすいかもしれない.血圧には日内変動があり,測定するタイミングによって値が異なってくる.例えば降圧薬の臨床試験で,組み入れ基準が収縮期血圧160mmHg超と決められていたとしよう.そうすると,たまたま測定時点で165mmHgだった患者が試験に登録されることになるが,この患者の平均血圧が実は155mmHgだったとしたら,薬を飲まなくても自然変動で,あるタイミングで145mmHgになることだってあり得るわけである.つまり高い値はより低く,低い値はより高くなり平均値に近づいていくのである.前回,3つのMの話をしたが覚えておられるだろうか.今回の事例では,前回とは別の意味で「平均には気をつけろ!」なのである.

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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