2014 年 50 巻 4 号 p. 348
小胞体(endoplasmic reticulum:ER)は,膜タンパク質および分泌タンパク質の合成の場であり,これらタンパク質を正しく折りたたむための機構を備えている.この折りたたみは,シャペロンタンパク質群と20種あまりあるプロテインジスルフィドイソメラーゼ(protein disulfide isomerase:PDI)ファミリータンパク質の協調により厳密に行われている.一方,上手く折りたたまれなかったタンパク質(ミスフォールドタンパク質)は,ERから細胞質に逆行輸送され,ユビキチン-プロテアソーム系で分解されることでタンパク質の品質が管理される.このようなタンパク質分解機構はER関連分解(ER-associated degradation:ERAD)と呼ばれ,これら品質管理機構の破綻は,ミスフォールドタンパク質の過剰な蓄積(ERストレス)を引き起こす.本稿では,ERに局在するPDIファミリータンパク質の1つであるERdj5の新たな機能を解明したOkaらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Oka O. B. et al., Mol. Cell., 50, 793-804 (2013).
2) Ushioda R. et al., Science, 321, 569-572 (2008).