ファルマシア
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談話室
時代の流れと大学教育に思う
小林 資正
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2014 年 50 巻 6 号 p. 554_1

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抄録

大学紛争の終わり頃に大学に入学した私は,大学改革を求める(?)学生による大学封鎖やそれを解除するために導入された機動隊との衝突に訳も分からず熱くなったことが懐かしい.私が受けた講義についてはもうほとんど記憶になく思い出されるのは,講義時間の大半が製薬企業におられた頃の経験談だった先生の講義や,ひたすら板書されたことをノートに書き写すことに必死だった先生の講義があったことぐらいである.
楽しかったのは,3年次の午後にあった基礎実習である.ガラス細工に始まり,化学合成,ネズミの解剖,電気配線などいろいろと科学実験を経験させていただいたが,いつも誰よりも早くその日に課せられた項目の実験を達成しようと1人競争心を燃やしたものだった.4年生になると研究室に配属され,結果の見えない研究テーマをいただいて研究者の仲間入りをさせていただいた.結果が導き出されることが分かっている学生実習と違い,研究というのは単純な作業の積み重ねだけでは展開せず,試行錯誤の繰り返しにより見いだした工夫が成果を生むことから,興奮し面白さを体感することができた.
ひたすら大学入試の勉強のために費やしてきた高校時代を取り返すために,大学に入ってからは休みになったらあちこち旅行に出かけたり友達と麻雀したりして遊んでいたが,このまま卒業したのではつまらないと思うようになり,もっと研究がしたくて大学院に進学した.
その後,大学に居残って大学教員になり,あと数年で定年退職を迎えようとしている.その間,いろいろな制度の改革があり,大学教育も大きく見直されてきた.シラバスの作成,授業アンケート,アドミッションポリシー,薬学教育モデル・コアカリキュラム,安全管理業務,大学評価や教員の個人評価のほか,6年制の薬学科においては薬剤師養成のための共用試験制度や実務実習制度などなど枚挙にいとまがない.その結果,書類作りや教育業務がどんどん増えて,先生方にとってかなり負担になってきているのではと心配する.この先生方のご苦労が報われて,若き優秀な研究者が数多く育って欲しいものである.

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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