医薬品開発技術が大きく発展した現在においても,がんやアルツハイマー病などの完治が難しい疾患や,有効な薬剤が存在しない疾患が数多く存在する.その理由として,疾患に至る機構や標的疾患タンパク質の詳細な構造が明らかとなっていないといった問題の他に,医薬品の元となるリード化合物が十分に探索しきれていないことなどが挙げられる.近年,我々はこれまで創薬の化合物ライブラリーとして用いることが難しいとされていた‘特殊ペプチド’を使った新しい技術を見いだし,これまでの医薬品とは異なる特徴を有する生理活性分子の探索に成功している.本稿では,この特殊ペプチドを使った創薬について,着想の経緯から最新の研究成果まで紹介したい.