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低酸素環境下のがん細胞を標的としたがん治療戦略
中村 伊吹
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2014 年 50 巻 8 号 p. 818

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抄録

がん薬物療法において,副作用が少なく高い抗腫瘍効果を得るためには,腫瘍特異的に抗がん活性を示すことが重要である.そのため近年,腫瘍の特性に着目した新しいアプローチが報告されつつある.すなわち,固形腫瘍において血管から離れた領域に形成される低酸素環境を標的とする治療法は腫瘍特異的ながん治療法になり得ると期待されている.これまでに,低酸素環境下のがん細胞内の豊富な還元酵素により還元活性化されることで,細胞毒性を示す低酸素活性化プロドラッグであるマイトマイシンCやチラパザミン(tirapazamine:TPZ)などが開発されてきたが,その中でも高い低酸素選択性を示すTPZの研究が盛んに行われている.TPZはN-オキシド構造を有する親電子性物質であるため,低酸素環境下においてシトクロムP450還元酵素によりDNA損傷性ラジカルへと変換され,低酸素応答性の細胞死を誘導する.TPZは低酸素活性化プロドラッグとして期待されたが,臨床試験において治療効果が不十分であったことから,新たな低酸素活性化プロドラッグの開発が求められてきた.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Hu Y. et al., Molecules, 17, 9683-9696 (2012).
2) Liu X. W. et al., Autophagy, 10, 111-122 (2014).

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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