ヒトの腸管には少なくとも約1,000種類,数百兆個にも及ぶ微生物が共生しており,これらの腸内細菌が織りなす生態系を腸内フローラという.腸内フローラはヒトに対して様々な生理活性を持っており,中には病原菌からの防御やビタミン供給などの有用な作用を持つものもいれば,発がん性代謝産物の産生など有害作用を持つものもいる.これらの菌叢バランスにより,健常人では正常な腸内環境が維持されている.しかしながら,腸内フローラの恒常性が破綻することによって肥満やアレルギー,神経疾患など種々の疾患発症につながることが近年の研究によって明らかになってきている.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Furusawa Y. et al., Nature, 504, 446-450 (2013).
2) Smith P. M. et al., Science, 341, 569-573 (2013).
3) Mortha A. et al., Science, 343, 1249288 (2014).
4) Trompette A. et al., Nat. Med., 20, 159-166 (2014).