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カテキン類A環由来フェノキシラジカルの証明
下津 祐樹
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2015 年 51 巻 10 号 p. 988

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抄録

今日,緑茶ポリフェノールとして知られるカテキン類が強い抗酸化活性を有し,日々の健康に役立つことは広く一般に認識されるようになった.カテキン類が抗酸化活性を示すメカニズムとしては,B環の水酸基が隣り合ったカテコール構造もしくはピロガロール構造中の水酸基の水素を与えてラジカルを消去する機構が提唱されており,反応の結果生じるフェノキシラジカルは,電子の非局在化や隣接する水酸基との水素結合によって安定化される.このメカニズムは,電子スピン共鳴(electron paramagnetic resonance:EPR)による定常状態のB環由来フェノキシラジカルの検出や,カテキン類の酸化によって生成する反応物の構造解析から支持されており,B環が抗酸化活性に中心的な役割を果たすことは間違いないと考えられている.一方,超短時間(ナノ秒単位)での反応を観察することが可能なパルスラジオリシス法を用いた過去の検討において,A環由来フェノキシラジカルの存在が紫外可視吸収スペクトルから想定されていたが,その直接的な証拠はいまだ得られていなかった.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Quideau S. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 50, 586-621 (2011).
2) Severino J. F. et al., Free Radical Biol. Med., 46, 1076-1088 (2009).
3) Neshchadin D. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 53, 13288-13292 (2014).

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© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
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