ファルマシア
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「運動の健康効果を模倣する薬」というアイデア
眞鍋 康子藤井 宣晴
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2015 年 51 巻 11 号 p. 1072-1075

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抄録

運動が健康に良いということを否定する人はいないであろう.あまりにも当然と受け止めて「なぜ運動が健康をもたらすか?」を考える機会も少ないのではないだろうか.運動の効果については,全身性にエネルギー消費量を増加させることで体重や体脂肪を減少させ,過剰な脂質の蓄積が原因でもたらされる慢性炎症を改善させることが,一般によく知られている.つまり運動そのものの効果よりも脂肪の減少による効果と説明される場合が多い.しかし,脂肪を減少させるだけなら運動に頼る必要はなく,食事制限によって適正な体重を維持すればよいはずである.それにもかかわらず,「運動が健康に良い」と言われるのには相応の理由がある.近年の大規模な疫学研究では,運動が全身性に多様な効果を有することを示している(表1).この中には,必ずしも脂肪の減少が直接の機序と言えないような効果も含まれており,その多くは運動により骨格筋の量を維持することや,筋収縮による何らかの作用によって引き起こされているのではないかと推察される.
近年,運動の多面的効果を科学的データで説明しようとする研究に関心が持たれるようになってきた.本稿では,運動による直接的な健康の効果として,1)筋への糖取り込みの変化と全身の糖代謝の影響,2)骨格筋から分泌されるマイオカイン,の2つについて創薬との関連性に言及しつつ概説する.

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© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
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