脂溶性ビタミンであるビタミンAの生体における役割は2つに大別される.1つは視物質の構成成分として視覚機能を維持する役割,もう1つは核内受容体リガンドとして体を構成する種々の細胞の機能を調節する役割である.後者については,特に免疫系細胞や神経系細胞の機能調節に関する研究が近年盛んに行われ,新たな知見が蓄積されつつあるとともに,ビタミンA関連薬の臨床適用拡大を目指した動きが出てきている.本稿では,ビタミンAの生理・薬理の基本的事項,および現状のビタミンA関連医薬品の適応症について要約した後,今後の展開の可能性について紹介する.