1991年に始まったヒトゲノムプロジェクトによって,ヒトの遺伝子であるゲノムDNAの塩基配列の解読が行われ,2003年4月には完全解読宣言がなされた.ヒトゲノムの塩基配列が明らかになったことによって得られた情報はいろいろあるが,そのうちの1つは,それまで想像されていたよりも「ヒトの遺伝子には個人差がある」ということである.このゲノムDNAの塩基配列の多様性,すなわち遺伝子多型は,慢性疾患等の発症リスクや治療薬の効力の違いなどの「個人の体質の違い」が生じる原因として広く認知され,この10年ほどの間に様々な知見が急速に蓄積されてきた.
本稿では,ビタミンE代謝に関連のある遺伝子多型について紹介する.