2015 年 51 巻 3 号 p. 255
多価不飽和脂肪酸は,分子内の二重結合の位置により,ω-3系とω-6系に分類される.これらはほ乳動物の体内において相互変換されることはなく,食物を通して摂取する必要がある.したがって体内のω-3系,ω-6系の脂肪酸バランスは,栄養として摂取した脂肪酸の種類に依存する.ω-3系脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)は,脳の正常な発達と認知機能において重要であると考えられており,他の臓器に比べて脳内のDHA量は非常に多いことが知られている.脳内でDHAは主にリン脂質のアシル基として存在しており,その大部分は血液脳関門(blood brain barrier:BBB)を介して末梢組織から脳に取り込まれると考えられているが,その輸送機構およびトランスポーターの実体は長らく不明であった.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Kidd P. M., Altern. Med. Rev., 12, 207-227 (2007).
2) Long N. N. et al., Nature, 509, 503-506 (2014).
3) Berger J. H. et al., PLoS ONE, 7, e50629 (2012).
4) Croset M. et al., Biochem. J., 345, 61-67 (2000).
5) Ben-Zvi A. et al., Nature, 509, 507-511 (2014).