ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
セミナー
日本における薬剤耐性菌の状況
柴山 恵吾
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 51 巻 4 号 p. 324-328

詳細
抄録

20世紀に入ってからペニシリンをはじめとする様々な抗菌薬が開発され,人類にとって大きな脅威である感染症から多くの人が救われてきた.しかし一方で,新たな抗菌薬が開発されると間もなく,その薬剤に耐性を獲得した細菌が出現し,薬剤の普及とともに拡散してきた.これまでに耐性が出現しなかった抗菌薬はなく,これは今後も続くと考えられる.近年,薬剤耐性菌は国境を越えて拡散し,世界的な問題になっている.菌種や薬剤によっては,耐性菌の割合が数年で大きく増加しているものもある.WHOは2013年に薬剤耐性菌に関する諮問グループを組織し,2014年に薬剤耐性菌に関する報告書を出した.WHOは,この中で今後取り組むべき課題の1つとして,薬剤耐性菌のグローバルサーベイランスの強化を挙げている.
日本においては,薬剤耐性菌のサーベイランスとして厚生労働省院内感染対策サーベイランス(Japan Nosocomial Infection Surveillance:JANIS)事業がある.本稿では,JANISの2013年の公開情報2)のデータを用いて,主要な各種耐性菌の国内での状況を紹介する.さらに,近年特に問題になっているカルバペネム耐性の腸内細菌科細菌について,日本でよく検出される耐性遺伝子や外国の状況との比較なども説明する.また,JANISが各参加医療機関個別に感染対策に活用していただくことを目的に返している報告書についても触れる.

著者関連情報
© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top