ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
速報 医療の現場から
機能性表示食品制度について
中尾 祐輔
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 51 巻 7 号 p. 688-690

詳細
抄録

機能性を表示することができる食品は,これまで国が個別に許可した特定保健用食品と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られていた.そこで,機能性を分かりやすく表示した食品の選択肢を増やし,消費者がその食品に関して,正しい情報を得た上で選択できるよう,平成27年4月から新たに「機能性表示食品」制度が開始された.
食品には,生命維持のための栄養面での働き(栄養機能)や食事を楽しもうという味覚・感覚面での働き(感覚機能)のほか,生体の生理機能を調整する働き(体調調節機能)があり,これらはそれぞれ1次機能,2次機能,3次機能と呼ばれている.すなわち,「機能性食品」の「機能性」とは3次機能のことであり,食品の3次機能に関する表示は,一般に機能性表示と呼ばれている.
栄養機能食品は栄養成分の機能を表示するものであり,食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)により定められた表示を行うことができる.また特定保健用食品は,その摂取により当該保健の目的が期待できる旨を表示するものであり,表示に当たっては,健康増進法(平成14年法律第103号)第26条第1項の許可または同法第29条第1項の承認を受ける必要がある.これら以外の食品に機能性表示を行うことは,食品表示法(平成25年法律第70号)や健康増進法により禁止されている.
このようななか,「国の成長・発展,国民生活の安定・向上および経済活動活性化への貢献」を目的とした規制改革会議が平成25年1月に発足し,検討項目の1つとして,「一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備」に関する議論が行われた.そして,栄養機能食品については対象成分が限定されていること,また,特定保健用食品については,食品ごとに安全性や有効性に関する臨床試験が必須であるとともに,許可手続に時間と費用がかかるため,中小企業にとってハードルが高いこと等,現行制度についての課題が指摘された.
その結果,規制改革実施計画(平成25年6月14日閣議決定)において,「特定保健用食品,栄養機能食品以外のいわゆる健康食品をはじめとする保健機能を有する成分を含む加工食品および農林水産物について,機能性の表示を容認する新たな方策をそれぞれ検討し,結論を得る.なお,その具体的な方策については,民間が有しているノウハウを活用する観点から,その食品の機能性について,国ではなく企業等が自らその科学的根拠を評価した上でその旨および機能を表示できる米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にし,企業等の責任において科学的根拠のもとに機能性を表示できるものとし,かつ,一定のルールの下で加工食品および農林水産物それぞれについて,安全性の確保(生産,製造および品質の管理,健康被害情報の収集)も含めた運用が可能な仕組みとすることを念頭に検討を行う.」こととなり,平成26年度の結論・措置となった.
この閣議決定を踏まえ,消費者・生活者の視点に立って国民全体の利益を考える観点から,企業等の責任において科学的根拠を基に機能性を表示できる新たな方策について検討するために,平成25年12月から平成26年7月までの計8回にわたり,消費者庁長官の下に設置された検討会を開催した.そして平成27年7月30日に公表された報告書を踏まえ,食品表示法第4条に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)および「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」(以下,「ガイドライン」という.)を平成26年度末に策定した.

著者関連情報
© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top