ファルマシア
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腸内細菌がマラリア感染に対する免疫応答を誘発する
二反田 康秀
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2015 年 51 巻 7 号 p. 706

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抄録

生物の進化は,遺伝子変異が蓄積することにより生じる.ある遺伝子変異が個体生存に有利に働く場合,その変異は優先的に保存される.類人猿やヒトでは,α-ガラクトース(α-galactose:α-Gal)の合成に必要なα1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(α1,3-galactosyl transferaseα1,3-GT)遺伝子の欠損が進化的に保存されている.α-Galは,ほ乳類をはじめ,原生生物や細菌の細胞膜に存在する細胞外多糖の一種である.これまでに,類人猿やヒトは,α1,3-GTを欠損することで,α-Galを抗原として認識できるようになり,α-Galを発現する病原体に対して抵抗性を獲得したのではないかと予想されてきたが,実験的に証明されていなかった.実際,大腸にはα-Galを発現する大腸菌が常在するため,ヒトは血中にα-Galを認識する抗α-Gal抗体を多く持っていることが知られている.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Galili U. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88, 7401-7404 (1991).
2) Macher B. A. et al., Biochim. Biophys. Acta, 1780, 75-88 (1780).
3) Menard R. et al., Nat. Rev. Microbiol., 11, 701-712 (2013).
4) Yilmaz B. et al., Cell., 159, 1277-1289 (2014).

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© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
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