全身性炎症反応症候群(SIRS)は外傷,感染症などに合併する全身性炎症である.特に感染症を原因とし,臓器障害を伴うSIRSのことを敗血症という.このような病態では炎症性サイトカインが過剰発現している.サイトカインシグナルにおいてキーになるのがToll様受容体(TLR)である.敗血症に関与するTLRとしてTLR4が詳細に検討されている.TLR4は協同で働くタンパク質MD-2と複合体を形成してグラム陰性菌外膜のリポ多糖(LPS)を認識し,シグナルを伝達する.近年の研究で,MD-2がLPSのコアを認識して炎症を誘導することが示されており,MD-2は細菌性炎症疾患治療の創薬ターゲットとなっている.
キサントフモール(XN)はホップ由来のフラボノイドの一種で,MD-2に結合することによりLPS刺激による炎症シグナルを抑制することは知られていたが,その結合様式については明らかとなっていなかった.今回Weitaoらは,計算化学的および実験的に,XNとMD-2の相互作用を検討したので紹介したい.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Peluso M. R. et al., Planta Med., 76, 1536-1543 (2010).
2) Weitao F. et al., Drug. Des. Devel. Ther., 10, 455-463 (2016).
3) Wang Y. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 353, 539-550 (2015).