ファルマシア
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細胞骨格が解糖系を制御する?
稲住 知明
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2016 年 52 巻 10 号 p. 971

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抄録

正常の分化細胞が主にミトコンドリアでの酸化的リン酸化を利用してATPを獲得しているのに対し,がん細胞や増殖の盛んな細胞においては,酸素存在下においても,エネルギー産生を解糖系に依存している.この好気的解糖はワールブルク効果として知られており,ATPの産生効率は低いものの,低酸素環境への適応や,細胞増殖時に必要な核酸,脂質等の生体原料を解糖系の副産物から供給する意味でも,がんの成長に非常に重要とされている.本稿では,Huらによって示された,ホスホイノシチド3-キナーゼ(phosphoinositide3-kinase:PI3K)による細胞骨格制御を介した新規の解糖系調節機構について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Vander Heiden M. G. et al., Science, 324, 1029-1033 (2009).
2) Hu H. et al., Cell, 164, 433-446 (2016).
3) Cantley L. C., Science, 296, 1655-1657 (2002).

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© 2016 The Pharmaceutical Society of Japan
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