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ガバペンチンによる術後悪心嘔吐PONVの予防効果
曽田 翠
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キーワード: PONV, 術後鎮痛, ガバペンチン
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2016 年 52 巻 11 号 p. 1079

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抄録

術後悪心嘔吐(postoperative nausea and vomiting:PONV)は,術後患者の30~50%が経験する頻度の高い愁訴であり,離床や経口摂取開始の遅延を引き起こし,術後の回復を妨げる.PONVは,結果的に予後の悪化や入院期間の延長を招き,患者のQOLを低下させるとともに医療経済学的な損失をもたらす.したがって,PONVの発症を予防することは医学的・医療経済学的側面から極めて重要である.これまでにPONVの予測因子として,女性,PONVあるいは動揺病の既往歴,非喫煙者,年齢,手術時間,術後のオピオイド使用などが報告されている.これらの予測因子のうち,女性,非喫煙者,PONV既往歴,術後のオピオイド使用をPONV発症の4大リスク因子として単純化したスコアがPONV発症のリスク評価に用いられており,リスク因子の保有数が増えるとPONVの発症頻度は高くなる.また,制吐薬やデキサメタゾンの使用はPONVの発症頻度を低下させるものの,PONVの発症には個人差があり,その発症メカニズムや有効な予防策は未だ解明されていない.
抗けいれん薬ガバペンチンは神経因性疼痛に有用であることがよく知られているが,術後疼痛に対する非オピオイド性鎮痛補助薬としてガバペンチンの術前投与が注目されている.さらにガバペンチンは,がん化学療法により誘発される悪心の軽減にも効果があると報告されている.そこで本稿では,ガバペンチンの術前投与がPONVに与える効果を評価したメタアナリシスについて紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Apfel C. C. et al., Br. J. Anaesth., 109, 742-753 (2012).
2) Choi J. B. et al., Yonsei Med. J., 55, 1430-1435 (2014).
3) Cruz F. M. et al., Supprot Care Cancer., 20, 601-606 (2012).
4) Grant M. C. et al., Anesth. Analg., 122, 976-985 (2016).

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© 2016 The Pharmaceutical Society of Japan
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