2016 年 52 巻 12 号 p. 1155
アトロプ異性体は,1, 1'-ビ-2-ナフトールなどの置換ビアリール化合物で見られる回転障壁から生じる軸不斉の1つであり,抗生物質のバンコマイシンのようなマクロサイクリック構造内で存在することもある.この異性体を医薬品開発に応用するには,最適構造の選択,異性体の安定性への理解や合成法開発など多くの検討が必要である.これらの課題を克服した方法論は,新たなドラッグデザイン手法としての活用が期待される.最近,ブリストル・マイヤーズスクイブのGlunzらから,マクロサイクリック構造内のアトロプ異性の制御によってin vitroプロファイルの改善が達成された報告がなされたので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Evans D. A. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 37, 2700-2704 (1998).
2) Glunz P. W. et al., J. Med. Chem., 59, 4007-4018 (2016).
3) Priestley E. S. et al., J. Med. Chem., 58, 6225-6236 (2015).