ファルマシア
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談話室
バランス
奥住 竜哉
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2016 年 52 巻 3 号 p. 204

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抄録

最近,“バランス感覚”について考えることが多くなった.「あの人はバランス感覚いいよね」「あの人はバランス感覚に欠けるよね」など,日常会話でしばしば使う言葉である.感覚的に理解しているつもりになっているが,解釈は意外と難しい.“バランス感覚”とはどんな意味だろうか? 改めて考えてみると,「相反する2つの指標の間で,状況に応じて適切なポジションを取る力」のように思う.仕事をする中で,正反対のことがいずれも大事であるということは往々にしてある.例えば,大胆さと慎重さ,攻めと守り,安定と変化など挙げればきりがない.これら2つの正反対の指標の間で,置かれた状況を踏まえて適切なポジションをとって物事を進めていける力,が“バランス感覚”なのではないだろうか.「慎重かつ大胆に進めてくれ」と言われたら普通の人は面食らうだろうが,そこで落ち着いて状況を分析して適切な行動を起こせる人は,バランス感覚に優れた人と言える.考えてみれば仕事とは矛盾の塊である.企業の例で言えば,端的なのが「利益を上げる」という言葉だ.利益を上げるためには,売上を増やしてコストを減らすことが必要であるが,一般に売上を増やすにはコストがかかるからである.したがって,利益を最大化しようとすると「売上とコスト」という2つの相反する指標の間で適切なポジショニングを取る必要があるわけである.仕事の本質とは,このような矛盾する2つの指標の間で適切なポジションを取り,課題を解決することだと考えれば,バランス感覚という能力は仕事をする上で必要不可欠な能力と言える.

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© 2016 The Pharmaceutical Society of Japan
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