ファルマシア
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個々のがん患者に有効な薬物投与方法を見つけるための新たな診断ツール
田母神 淳
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2016 年 52 巻 3 号 p. 255

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抄録

癌に対して様々な治療法が確立された現代においても, 病巣から癌細胞を完全に取り除き, 転移による再発を防ぐことは困難であるといわれている.癌の転移・再発のメカニズムとして現在有力とされているのは, 腫瘍細胞中に一部存在する自己複製能, 多分化能をもつ癌幹細胞(Cancer stem cells:CSCs)が起点となって癌細胞の増殖が進行するという考え方(癌幹細胞仮説)である.この仮説が提唱されて以降, CSCsを標的とした治療法の研究が進められてきた.しかしながら, 腫瘍細胞中に存在するCSCsの割合は非常に少なく, 単離するのが難しいため, 治療薬のスクリーニングは技術面・コスト面からも困難を伴う.その一方で, 薬に対する反応性は個々の患者ごとに異なるため, 効果的な治療薬と投与量の組み合わせを見つけるためには, 網羅的に調査を行い, 統計学的にデータを蓄積していく必要がある.
本稿では, こうした問題を克服し, 個々の癌患者に対応した薬物スクリーニング・ライブラリを構築するための試みとして, Carstensらにより新たに開発された薬剤溶出性マイクロアレイについて紹介する. 
なお、本稿は下記の文献に基づいて、その研究成果を紹介するものである。
1) Reya T. et al., Nature, 414, 105-111 (2001).
2) Carstens M. R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 112, 8732-8737 (2015).

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© 2016 The Pharmaceutical Society of Japan
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