ファルマシア
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オリゴデンドロサイトの脱落は末梢免疫系を介した遅発性の脱髄を誘導する
泉尾 直孝
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2016 年 52 巻 8 号 p. 797

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抄録

多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は,再発緩解を繰り返しながら慢性的に進行していく神経変性疾患であり,また自己免疫疾患としての側面を持つ.すなわち,中枢神経系の神経軸索の髄鞘成分に対する自己反応性免疫細胞の出現と,髄鞘の脱落に伴う神経症状を特徴とする.薬物誘導モデルなどの動物モデルを用いてMSの病態形成のメカニズムは解析されてきたが,いまだ自己免疫反応性と脱髄症状の因果関係は明らかではない.Trakaらは,髄鞘形成細胞であるオリゴデンドロサイトを特異的かつ後天的に脱落するマウスを作製解析したところ,オリゴデンドロサイトの脱落が自己免疫応答を誘導することが明らかとなった.本稿では,このマウスの解析よって得られたMSの病態形成機序に関する知見について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Traka M. et al., Brain, 133, 3017-3029 (2010).
2) Traka M. et al., Nat. Neurosci., 19, 65-74 (2016).

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© 2016 The Pharmaceutical Society of Japan
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