ファルマシア
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光によりエピゲノムを制御する小分子阻害剤
川口 充康
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2017 年 53 巻 1 号 p. 61

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抄録

エピジェネティクスはDNA塩基配列の変化を伴わず,ヒストンのアセチル化やDNAのメチル化などの化学修飾により遺伝子発現が調節される現象であり,細胞増殖や体内時計制御などの生理的・病理的に重要な機能に関連している.その制御を担う酵素の1つにヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)がある.これまでに多くの小分子HDAC阻害剤が開発され,それを用いることでエピゲノム制御に関する研究が大きく進展してきた.しかし,小分子を用いたエピゲノム制御の最大の欠点として,時空間分解能の低さが挙げられる.
近年,オプトジェネティクス(光遺伝学)に代表される,光を利用した遺伝子の発現制御に関する技術開発が盛んになされている.光を利用する最大の利点は,高い時空間分解能にある.ある特定の時間,場所において遺伝子の発現を変化させることで,極めて詳細な遺伝子の機能解析が実現できる.本稿では,光制御によって前述の欠点を克服した新規小分子HDAC阻害剤を合成・開発し,遺伝子改変していない細胞において高い時空間分解能でエピゲノム制御を実現できることを示した,Reisらの報告について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Tischer D., Weiner O. D., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 15, 551-558 (2014).
2) Reis S. A. et al., Nat. Chem. Biol., 12, 317-323 (2016).

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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