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3Dスキャニングおよびプリンター技術を用いた製剤開発
照喜名 孝之
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2017 年 53 巻 4 号 p. 365

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抄録

3Dプリンター技術の進歩は目覚ましく,様々な業界で利用されている.そして遂に2015年8月に,米国FDAが世界で初めて,3Dプリンター技術を用いて製造されたてんかん治療薬(口腔内崩壊錠)を承認した.この錠剤は,1980年代にマサチューセッツ工科大学で開発されたpowder-liquid 3Dプリント技術を応用して製造されている. この3Dプリンター技術は,特殊な液体を使って粉末に粘着性を持たせ,これを層形成していく技術である.この技術を用いた製剤開発が確立・一般化されれば,各患者のニーズに対応して,投与量を簡単に調整できるようになるため,3Dプリンター技術への期待は大きい.しかし,現状では製造するためのプリンターは高額であり,この3Dプリンター方式による医薬品製造の一般化にはほど遠い.現在,比較的実現可能な製剤開発で利用できる3Dプリンター技術としては,特許切れとなり,低価格帯となった熱溶解積層(fused deposition modeling:FDM)方式と,光造形(stereolithography:SLA)方式がある.FDM方式では,造形材料であるプラスチック様フィラメントを熱で溶融して,ノズルから押し出し,積み上げて造形する.一方,SLA方式では,液体状の光硬化性樹脂を紫外線レーザーで一層ずつ硬化させて積層し,造形する.本稿では,FDM方式とSLA方式の2種類の3Dプリンター技術を用い,尋常性ざ瘡(ニキビ)治療に適した,オーダーメイド可能な鼻ニキビ治療用薬物放出デバイスの開発について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Sachs E. M. et al., U. S. Patent 5, 204, 055(1993).
2) Goyanes A. et al., Eur. J. Pharm. Biopharm., 89, 157–162(2015).
3) Goyanes A. et al., J. Controlled Release, 234, 41–48(2016).

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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