ファルマシア
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創薬標的としてのnAChR:精神疾患患者で喫煙率が高い理由!?
溝口 博之
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キーワード: ニコチン, nAChR, hypofrontality
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2017 年 53 巻 9 号 p. 923

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抄録

前頭前皮質は高次の学習記憶を司る脳部位であり,ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を介したアセチルコリン神経の投射・支配を受けている.統合失調症などの精神疾患患者は,前頭前皮質の機能が低下(hypofrontality)しており,また,喫煙率が高い傾向がある.最近,ゲノムワイド関連解析により,nAChRのα5サブユニットを司るヒトCHRNA5遺伝子に一塩基多型(SNP)が存在することが分かり,この変異が喫煙や統合失調症のリスクを高める可能性が報告された.基礎研究においても,マウスのα5サブユニット遺伝子を欠損させると,前頭前皮質の形態学的変化や行動に異常が生じることが報告されているが,ヒト遺伝子多型が,細胞活性あるいは神経回路にどのような影響をもたらすのか,さらには統合失調症患者で観察されるような行動障害や,hypofrontalityを引き起こすかは不明である.
本稿では,ヒトα5サブユニット変異体(α5SNP)を発現するマウスを用いて,α5SNPがもたらす皮質機能障害について検討したKoukouliらの研究を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Tobacco and Genetics Consortium., Nat. Genet., 42, 441–447(2010).
2) Schizophrenia Working Group of the Psychiatric Genomics Consortium., Nature, 511, 421–427(2014).
3) Proulx E. et al., Cell. Mol. Life Sci., 71, 1225-1244(2014).
4) Koukouli F. et al., Nat. Med., 23, 347–354(2017).

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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