ファルマシア
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病原性レプトスピラは感染初期に脂肪組織に定着する
福井 貴史
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2018 年 54 巻 1 号 p. 74

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抄録

レプトスピラ症は世界中で見られる人獣共通感染症である.その病原体であるレプトスピラは細長いらせん状の運動性細菌で,げっ歯類をはじめとする野生動物やブタなどの家畜といった様々な動物を保菌動物とし,その腎臓に保菌され,尿中に排菌される.ヒトは,保菌動物の尿,もしくは尿で汚染された水や土壌との接触で創傷や粘膜から感染し,重篤化すれば黄疸,腎不全,肺出血などの症状を示す.流行は全世界的に起こっており,特に熱帯・亜熱帯において台風に伴う洪水や雨季に関連した大流行がみられるため,早急な対策が求められる.しかし,マラリアやAIDSなどに比べ重要性や緊急性があまり認識されずneglected diseaseの1つとされている.これには,多様な血清型のため効果的なユニバーサルワクチンが開発されていない,培養や確定診断が煩雑である,効率の良い遺伝子改変技術が確立されておらず,病原因子や感染病態は解析の途上であるといった原因にも拠る.このような背景から,特に感染成立にいたる過程においては依然不明な点が多い.本稿では,Ozuruらによってヒト感染のモデル動物であるシリアンハムスターを用いたin vivo imaging system(IVIS)による解析から,感染初期におけるレプトスピラの動態が明らかとなったので,その研究成果を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Picardeau M., PLoS Negl. Trop. Dis., 9, e0004039(2015).
2) Ozuru R. et al., PLoS One, 12, e0172973.(2017).
3) Johnson R. C., Gary N.D., J. Bacteriol., 85, 976-982(1963).
4) Lambert A. et al., Appl. Environ. Microbiol., 78, 8467-8469(2012).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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