ファルマシア
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脳血管を構成する細胞タイプと遺伝子パターンの組織内分布が明らかに
恒岡 弥生
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2018 年 54 巻 10 号 p. 986

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抄録

我が国における脳血管疾患は,死因別死亡総数のうち8.4%を占め,男女ともに4番目に多い死因となっている(平成28年人口動態統計の概況より).さらに近年では,多くの中枢神経疾患が脳血管の機能障害と関連していることが明らかになっている.アルツハイマー病患者では,微小血管の遺伝子発現パターンは健常者と異なるという報告もある.したがって,脳血管の健康状態を良好に維持することは,本来の脳機能の維持,さらには健康寿命の延伸に重要であると言えるだろう.脳血管は内腔を一層に覆う内皮細胞とその外側の壁細胞(血管平滑筋細胞や周皮細胞)で構成される.動脈・静脈部分には血管平滑筋細胞が,毛細血管部分には周皮細胞が内皮細胞に密着して存在し,さらにその外側をアストロサイトが覆っている.今回Vanlandewijckらは,単一細胞RNAシーケンス(Sc-RN seq)により脳血管構成細胞を遺伝子発現パターンの違いに基づき分類し,組織中の各種血管構成細胞に依存した遺伝子発現パターンの空間配置を明らかにしたので,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Mackic J. B. et al., J. Clin. Invest., 102, 734-743(1998).
2) Iadecola C., Neuron, 80, 844-866(2013).
3) Wang S. et al., J. Alzheimers Dis., 31, 193-205(2012).
4) Vanlandewijck M. et al., Nature, 554, 475-480(2018).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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